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無血戦争

 タイトル:無血戦争
 著者:Peter P. Perla
 翻訳:井川宏
 出版社:ホビージャパン

本書出版時は、タイトルの奇抜さと湾岸戦争など地域紛争が多発する時代に突入していたことから、新聞の書評にも取り上げられていた書籍です。
著者のパーラー博士は、オペレーションズ・リサーチ・アナリスト兼プロのウォーゲーマーであり、無血戦争とは流血を伴わないウォーゲームを比喩的に表したものです。(因みに、原題は"The Art of Wargaming: A Guide for Professionals and Hobbyists"です。)
しかし、結構高かったのと、立ち読みの結果、プロ用のウォーゲームへの論述の比重が高いことが分かったので、当時は購入しませんでした。今回、愛知県図書館からお借りすることによって初めて目を通すことができました。^^

本書の構成は次のようになっています。
第1部:背景 ウォーゲームの歴史について述べられています。
第2部:原理 ウォーゲームのデザインについて述べられています。ただし、プロ用のウォーゲームを中心に述べられています。
第3部:将来の展望 主にプロ用のウォーゲームの将来性と活用方法について述べられています。

本書はプロ用とホビー用のウォーゲームの双方について言及されていますが、プロ用とホビー用のウォーゲームの違いは、第2部でも明らかなように、その目的において異なります。すなわち、プロ用のウォーゲームの目的は、教育目的や戦略立案・検証目的であり、ホビー用のウォーゲームは娯楽目的です。
また、ウォーゲームとオペレーションズ・リサーチは質的に全く異なり、プロ用のウォーゲームの焦点は意思決定過程であり、プレイ後のブリーフィングではその決定の当否が議論の中心となります。リアリズムは審判官の判断やコンピュータのサポートシステムに依存しますが、ウォーゲームのモデル化についての議論は焦点を外したレベルの低い議論であり、避けるべきとされています。
ホビー用のウォーゲームにおいては、ミリタリー的な興味を満たすリアリズムもゲームの焦点の一つであることは論を待ちません。

結論的に言えば、本書ではプロ用とホビー用のウォーゲームの融合を目指しています。本書発行時の1990年(訳書は1993年発行)頃には、SPIやVictory Gamesなど、オペレーションズ・リサーチの手法を取り入れたゲームメーカーや、ダニガンやマーク・ハーマンなど国防総省のゲームデザインを下請けしていたデザイナーも健在でしたが、本書発行時から既に20年経ちました。
現在では、ゲームシステムの斬新さに特化した作品や、カード・ドリブン・システムに見られるような、歴史的イベントを追認するに過ぎないゲームも増えて、プロ用のウォーゲームの目的である、教育目的や戦略立案・検証目的とは完全に乖離したホビー用のウォーゲームが増えているように思われます。
しかしながら、歴史的興味やミリタリー的な興味を満たす、娯楽目的としては、むしろ進化していると言えるのでしょう。

ともあれ、プロ用のウォーゲームへの論述の比重が高く、ホビー用のウォーゲームにのみに興味がある方にはお勧めしませんが、プロ用のウォーゲームも含めて興味がある方には、参考になるのではないかと思います。
本書を借りて読むきっかけになったのは、坂の上の雲第7回の兵棋演習のシーンです。
本書の「第1部:背景」においては、日本におけるウォーゲームの歴史についてもかなり詳細に述べられています。
とはいえ、論述の中心は第2次世界大戦、例えば宇垣中将が審判をしたミッドウェー海戦の兵棋演習などであり、創始者については述べられていません。
因みに、宇垣中将の日本空母3隻が撃沈破された結果を覆した審判については、現実に陸上機からの攻撃は効果が無かったことを踏まえて好意的な評価であり、むしろ兵棋演習の教訓として分かった、航空機による奇襲攻撃に対する対策の必要性に意を払わなかった、源田実らの失策としてます。
元々、プロのウォーゲームは、結果を判定することが主要な目的ではなく、そこから教訓を得ることですから、確かにそういうことになるのでしょう。

訳者による本書のあとかぎにおいては、秋山真之が兵棋演習の創始者ということになっています。
もっとも、紙幅は余り取られていませんので、本書の記述のみをもって判断することはできないでしょう。

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