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マハン海軍戦略

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 タイトル:マハン海軍戦略
 著者:アルフレッド・セイヤー・マハン
 翻訳:戸高一成
 出版社:中央公論新社

アルフレッド・セイヤー・マハンは、「坂の上の雲」に出てくるように、秋山真之が米国留学中に師事した人物です。
本書は、「坂の上の雲」で秋山真之がアルフレッド・セイヤー・マハンに会った際にサインして貰った海軍戦略についてのテキストですが、訳書の版は日露戦争以降の比較的新しいものであり、秋山が学んだ本そのものではありません。
しかし、日露戦争以降の教訓が反映されていますから、秋山が目指した方向性には、むしろ沿うものだと思われます。

本書は、多数の章分けがされていますが、基本的な流れは、
1.史例の紹介と解題
2.戦略論の定立
3.カリブ海での情勢への当てはめ
4.日露戦争への当てはめ
となっており、戦史の解析から戦略論を打ち立て、それを(米国にとって当時重要だった)カリブ海と、実際に戦闘が行われた日露戦争に当てはめてみるという構成になっています。

マハンの戦略で特に強調しているのは、集中の原則です。
マハンも指摘してますが、地形の障害を余り受けず、機動力に富む海軍は、海軍の行動は防者であっても必然的に攻撃的となり、攻撃時には戦力の高い方がますます有利となるランチェスター法則が適用されますから、兵力を集中させて、高い戦力で戦った方が有利となります。
しかし、単純に総兵力が高い方が必ずしも勝つ訳ではなく、重要な戦略地点を押させ、戦略線を維持して、艦隊の戦力を保持しなければ、兵力の集中も、戦力の維持もできません。

本書は、基本的に海軍戦略のみを扱った本ではありますが、特に海軍特有の術科的・技術的な本ではなく、戦略論に関する基本的な概念を扱ったものですから、その戦略論は別の分野にも応用できるものです。
先に述べたとおり、海軍の行動は、地形の障害や住民の抵抗など、純粋な戦力のぶつかり合い以外の要素がそれほど多くありませんから、むしろ純粋な戦略論の本としては分かりやすい本になっていると思います。
マハン海軍戦略が出版された後の大規模な近代海軍による戦闘は、日露戦争だけですので、本書では日露戦争についての記述が(日露戦争についての章以外にも)多数見られます。
記述の多くは日本海軍について非常に好意的なものですが、日露戦争についての章は、主にロシア側の事情を多く取り上げています。
これは敗者にこそ教訓が隠されているというマハンの考えによるものです。

この版が出た当時はマハンも海軍兵学校の教官を引退していたようであり、ロシアが取るべき戦略についても純粋に学問的な面から記述されていると思われます。
当時、ロシアはアジアの旅順艦隊とヨーロッパのバルチック艦隊に二分され、双方を合計すれば日本の連合艦隊を凌駕していましたが、バラバラに戦ったため各個撃破されました。
マハンは、集中の原則から、旅順艦隊とバルチック艦隊を統合し、1つの艦隊にすべきだったとしてます。
しかし、ヨーロッパを本拠地とするロシアがヨーロッパに艦隊を置かない訳にはいかないでしょうから、そうすると、アジアには有力な艦隊が残らないことになります。
軍事的にはともかく、アジアに権益を求めていたロシアにとっては、政治的にはなかなか難しい要求だと思います。

同様のことは、アメリカ海軍の配置についても言え、マハンは集中の原則から、大西洋艦隊と太平洋艦隊に分けるには愚作であるとして、1つの艦隊にすべきとしてます。
しかし、第2次大戦を想定してみると、ドイツなどヨーロッパの敵が大挙して大西洋を渡ってくることはないでしょうが、それでも首都がある東海岸に艦隊を全く置かないとか、あるいはハワイに有力な艦隊を置かないという選択は、なかなか難しいのだと思います。
つまるところ「戦争は他の手段をもってする政治の延長」(クラウゼヴィッツ)であり、純粋な軍事的な戦略だけでは語れないということなのだと思います。

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