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秋山真之戦術論集

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 タイトル:秋山真之戦術論集
 著者:秋山真之
 編集:戸高一成
 出版社:中央公論新社

本書は、秋山真之が海軍大学校教官時代に行われた講義録を集めたものです。
口述書であるため、反訳時に文語調にされてはいますが、戦前の本としては比較的読みやすいです。
本書には、海軍基本戦術第一篇、海軍基本戦術第二篇、海軍応用戦術、海軍戦務、海軍戦務別科が収められています。秋山は戦術教官であったため、これらはいずれも戦術に関する講義です。
本書の価値は、目次を見るだけで海軍戦術に詳しい人なら、十分に分かると思いますので、参考に文末に目次を記しておきます。

秋山は日露戦争前後を通じて海軍大学校教官をしていましたが、本書は日露戦争後の版を元にしています。
そのため、日露戦争で行った、あるいは日露戦争を教訓として得られた、秋山戦術を知るのに最適の本です。
ただし、直接的に日露戦争に関する記述は余りなく、一般的な戦術の具体例として挙げられているだけです。

秋山自身は海軍戦略に関する本も出版していますが、帝国海軍は秋山には戦略に関する講義を担当させませんでした。
戦略と異なり、戦術は分野ごとの特性が強くでる傾向があります。ことに海軍は術科的・専門的な面が強いので、一般的・普遍的な価値を見いだすのは難しいかもしれません。
アマゾンに、ビジネス参考書として読んだところ途方に暮れた旨の書評がありましたが、海軍戦術に興味が無い人には余り意味がない本だと思います。

本書でもっとも興味が引かれる部分は、艦隊運動に関する記述、ことに日本海海戦における敵前回頭による丁字戦法についてでしょう。
敵艦隊の進行方向を押さえて集中射撃を行う丁字に持ち込むために、反航戦(艦隊同士がすれ違う形態の戦闘)から急回頭により同航戦(艦隊同士が並走する形態の戦闘)に移行した訳ですが、秋山自身は乙字の変形で、優速時に有効とあっさり書いているだけです。
つまりは、日本海海戦における戦術は、秋山にとっては奇策ではなく、本書に記述された艦隊運動を組み合わせたものにすぎないという位置付けのようです。
本書の末尾には、海軍戦務別科が収録されています。これについて、本書の解説では次のとおり記述されています。

なお、この別科は実際の演習についての講義であるが、秋山はこの他に兵棋演習を取り入れていた。これは所謂ウォーゲームで、明治33年に海軍大学校教官であった山屋他人が陸軍の兵棋演習を参考に始めたものを、明治35年に至り後任の秋山が米国で行われていた海軍式の兵棋を取り入れたものである。秋山が米国留学から持ち帰ったので、一般的に米国からの導入と思われているが、英国海軍でも行われており、当時英国の世界軍艦年鑑"ALL THE WORLD FIGHTING SHIPS"の編集者であるFRED T.JANEが1898年にロンドンで発行したRULES FOR THE JANE NAVAL WAR GAMEが広く普及していた。この本は第一部戦術、第二部戦略とし、大きな海図版10枚と軍艦の小型模型など必要な駒を収めた箱二つを付録とした本格的なボードゲームであり、海軍大学校図書館の蔵書として収蔵されていた。秋山がこのウォーゲームに注目したことは確かであるが、秋山自身は、このゲームを、やや現実に合わない面が有るとして、独自にルールを作った。後に「海軍兵棋演習規則」として纏められ、ルールに数度の改訂を加えながら、太平洋戦争期まで使用された。


「海軍兵棋演習規則」について、ご存じの方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
海軍戦務別科はウォーゲームではなく、演習についての講義ですが、演習における戦闘解決方法として、戦闘結果表が掲載されています。崩れて読みにくくなるとは思いますが、参考までに紹介します。

   標点項目      遠戦攻撃力 近戦攻撃力 接戦攻撃力 防御力
艦種
戦艦(1万5000トン以上)  3       7       10      50
戦艦(1万トン以上)     2       5        8      45
装甲巡洋艦(1万トン以上) 2       5        8      40
装甲巡洋艦(1万トン以下) 2       4        7      35
二等巡洋艦          1       2        4      20
三等巡洋艦          0       1        3      20
通報艦             0       1        3      15
駆逐艦             0       0        2      10
水雷艇             0       0        1      10

用法
1本表の攻撃力標点は最高点を示すものなり、故に砲戦の情況に稽へ、射角のため全砲を発射する能はざるか或は艦の旋回若は射距離の急変等に依り照準困難なる艦の標点は適宜に減点するを要す。
2艦隊戦闘の場合は、対抗艦艇は常に其射撃目標とせる敵艦の番号を表示する数字号旗を掲揚するものとす、審判官は之を見て集弾の情況を知り、時間を計りて対抗艦艇の被害艦艇を暗算す。
3被害点数が防禦力標点の二分の一に達したる艦は其攻撃力半減するものとし、全点数に達すれば廃艦とす、而て両者共に標旗を以て表示せしむるものとす。

(付記)
本表は審判官之を暗記し単に審判の標準とするものなれば簡単にして記憶し易きを可とす、故に兵棋演習規則に規定しあるが如き精密のものたるを要せず。
又本表は単に砲術のの審判のみに用ふるものにて、尚ほ水雷戦の審判に対しては魚雷発射方位及発射距離等に準じて命中公算の標点を定め、或る公算点数に達したるものを命中と判決するを簡便なりとす。



海軍基本戦術 第一篇

第一章 戦闘力の要素
 第一節 総説
 第二節 攻撃力
 第三節 防禦力
 第四節 運動力
 第五節 通信力
 第六節 結論

第二章 戦闘力単位の本能
 第一節 総説
 第二節 戦艦の本能
 第三節 巡洋艦の本能
 第四節 通報艦、海防艦及砲艦の本能
 第五節 駆逐艦、水雷艇及潜水艇の本能

第三章 艦隊の編成
 第一節 総説
 第二節 戦隊の編成
 第三節 水雷戦隊の編成
 第四節 大艦隊の編成

第三章 艦隊の隊形
 第一節 総説
 第二節 戦隊の隊形
 第三節 水雷戦隊の隊形
 第四節 大艦隊の隊形

第四章 艦隊の運動法
 第一節 総説
 第二節 戦隊及水雷戦隊の隊形
 第三節 大艦隊の隊形
 第四節 結論

海軍基本戦術 第二篇

第一章 兵理
 第一節 兵戦の三大元素
 第二節 力の状態及用法
 第三節 優勝劣敗の定理

第二章 戦法上の攻撃諸法
 第一節 戦闘に於ける攻撃と防禦
 第二節 斉撃及順撃
 第三節 戦闘距離に基ける攻撃法の種別
 第四節 正奇の方術的攻撃法

第三章 戦法
 第一節 決戦に於ける戦法
 第二節 追撃戦法
 第三節 退却戦法
 第四節 戦闘戦法
 第五節 大艦隊の戦法
 第四節 水雷戦隊の戦法
 
海軍応用戦術

第一章 総説
 第一節 戦略と戦闘の関係
 第二節 戦闘の目的及種別
 第三節 戦闘の勝敗及戦果
 第四節 戦闘に於ける攻撃の正及虚実

海軍戦務

第一章 令達
第二章 報告及通報
第三章 通信
第四章 航行
第五章 碇泊
第六章 捜索及偵察
第七章 警戒
第八章 封鎖
第九章 陸軍の護送及揚陸掩護
第十章 給与

海軍戦務 別科
演習 
 第一節 演習の目的及要義
 第二節 演習の階級及其範囲
 第三節 演習の計画及実施
 第四節 演習の審判及講評

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