
タイトル:獄窓記
著者:山本譲司
出版社:ポプラ社
「どうもありがとうございました」
正門までの百メートルぐらいの道筋には、二、三十メートルおきに警備隊の看守が立っていた。私は、車の中から、ひとりひとりに頭を下げた。
車は、正門を出た。ついに、四百三十三日間における獄中生活が終わったのだ。
「あれはゴールの門じゃなくて、スタートの門なんだろうな」
私は、正門を振り返りながら、そう言った。呼応して、妻が答える。
「いよいよ新しい生活のスタートね。これから親子三人がんばっていきましょう」
アウシュビッツ強制収容所の門扉には、「ARBEIT MACHT FREI」(働けば自由になる)との標語か掲げられたといいます。
アウシュビッツの囚人や、死刑や(現在の所日本には存在しませんが)仮出所がない終身刑を受けた者を除いて、刑務所は受刑者を社会から隔離させる場所であるとともに、受刑者が社会復帰する窓口となる機関です。
著者は、菅直人の公設秘書を経た後、衆議院議員となるも、2001年2月、政策秘書給与流用事件により、懲役1年6ヶ月の実刑判決を受け、栃木県黒羽刑務所で服役した者であり、本書は獄中での体験を中心としたものです。
第1章では、秘書給与詐取事件についての著者が考える真相が明らかにされており、明言はしていませんが、菅直人を始め多くの政界人が、公設秘書の給与を私設秘書に流用する慣習があったことなどの経緯が記されています。
第2章では、府中刑務所における分類面接や、黒羽刑務所への移送や入所当初の体験談等が記されてます。
第3章では、著者が主に従事した刑務作業である、寮内工場における、身体や精神障害を抱えた同囚への生活の世話を焼くことなどが記されています。
第4章では、仮出所に向けての準備と、辻本清美議員の政策秘書給与流用事件により、再度政策秘書給与流用事件がクローズアップされた経緯が記されています。
本書は獄中体験記であり、体系的に刑事施設の受刑者の問題を指摘した本ではありませんので、この本に書かれているエピソードは黒羽刑務所における処遇であり、これをもって全ての刑事施設の問題を語ることが出来ないことには留意すべきです。
しかし、体験に根ざした話ですから、(著者の視点からは)少なくとも黒羽刑務所で起こったこと言えるのだと思います。
また、迫真性がありますから、ついつい読み進めてしまいます。
興味本位で書かれた獄中記とは異なり、その点は好感が持てるように思いました。
裁判員に選ばれた場合、懲役刑が選択されることが多いでしょうから、その意味でも参考に読んでおくと良いかもしれません。
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